計画に参加を:生物多様性の喪失を防ぐために投資家が果たすべき役割

June 3, 2024

5月22日の国際生物多様性デーは、投資家やその他の利害関係者に生物多様性の喪失を止め、逆転させるための行動を呼びかけています。2024年のテーマは「計画に参加を」となっており、昆明・モントリオールで採択された世界的な生物多様性枠組み(生物多様性計画とも呼ばれる)の実施を支援することです。

生物多様性喪失の原因には、人類による汚染と気候変動があります。一方で、私たちの存在は健全な生態系に依存しています。生物多様性がなければ、私たちの生活の状況や世界経済は深刻な影響を受けることになります。

生物多様性は、地球上の生命を構成するもので、人類が依存し、その恩恵をもたらす遺伝子や種、生態系の多様性を指します。また、私たちの経済、社会、文化を維持するためにも重要な役割を果たしています。

投資家が果たすべき役割

生物多様性が現在の速度で減少するのを防ぐためには、経済主体もその取り組みに参加する必要性があるとの認識が高まっています。欧州連合(EU)のサステナブルファイナンス開示規則や米国のインフレ抑制法(IRA)、世界生物多様性枠組みはいずれも、生物多様性を保護し、回復するための主要な取り組みの一例です。

企業は、生物多様性の喪失に対処する革新的なソリューションを開発することで、この取り組みに貢献できます。こうした企業は、規制環境や課税リスクの増大に対してより適切に備えることができるとともに、課題解決に向かう資金の流れから利益を獲得する可能性が高まります。

また、企業は自然関連リスク(物理的リスク、移行リスク、システミックリスク)にさらされており、自社の事業に影響を与える可能性を理解する必要があります。

生物多様性の喪失は危険な水準に

1970年から2018年の間に、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類の個体数は69% 減少したと推定されています。この現在の生物多様性の喪失のペースは、人類の歴史上のどの時期よりも速いものとなっています。

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、生物多様性の喪失の主な要因について、以下を挙げています。

  • 陸地/海洋の利用変化、生息地の喪失
  • 自然資源の採取
  • 汚染レベルの悪化
  • 気候変動
  • 侵略的外来種による固有種の駆逐

こうした要因はもはや持続可能ではないペースで拡大し続けており、現在100万種近くが絶滅の危機に瀕しており、その多くは数十年以内に絶滅すると言われています。

生物多様性の喪失は、潜在的な移行リスクや物理的リスク、訴訟リスクや規制リスクを伴う事業に影響を及ぼすことから、その投資価値にも影響を与える可能性があるのです。

投資ポートフォリオへの影響は?

BNPパリバ・アセットマネジメントでは、すでに公表している「生物多様性のロードマップ」(2021年)でも強調しているように、投資ポートフォリオにおける生物多様性喪失の潜在的な影響を理解し、評価することがますます重要になっていると考えています。

生物多様性への依存度や影響が大きいセクターにとって、とりわけ重要です。エネルギーや鉱業・金属、公益事業、食品や飲料セクターは、生物多様性の喪失から生じるリスクが極めてセクターと言えるでしょう。

ただし、生物多様性喪失のリスクは、これらのセクターに限定されるものではありません。例えば、植物や海洋生物の有効成分や分子が、新しい治療法を開発する上で重要な要素となるケースが多い製薬研究なども、打撃を受ける可能性のある分野です。とりわけ、生物多様性によってイノベーションの範囲は拡大し、病状によって治療法を特定したり、抗生物質の耐性菌に対処したりすることが可能になります。生物多様性の維持は、こうした分野における開発や革新能力を高めるために不可欠です。

世界経済フォーラム(WEF)の報告書 (英語) によると、現代医療で使用されている薬剤の25%は熱帯雨林の植物に由来し、抗がん剤の70%は自然からインスピレーションを得た天然または合成製品であるとのことです。つまり、ある種が絶滅すると、それを活用した潜在的な新薬が誕生しないということです。

全体として、生物多様性の喪失の影響は想像以上に広範囲に及びます。そして、生物多様性の喪失は経済活動を損ない、最終的には、私たちの繁栄を損なうのです。

WEFは同じ報告書の中で、世界全体のGDPの半分を超える44兆米ドルの経済価値の創出において、中程度から高程度に自然とそのサービスに依存しており、自然損失のリスクにさらされていると推定しています。

有言実行の企業にフォーカス

1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において、生物多様性は世界経済の議題として取り上げられました。それ以降、多くの政府が持続可能性(サステナビリティ)をより重視し、サステナビリティを経済発展プログラムの中心に据えるようになりました。私たちは、生物多様性への影響を軽減するような経済活動を形成、調整することが可能だと考えています。

投資家にも果たすべき役割がありますが、生物多様性に関連した投資戦略に投資資金を配分することで貢献できます。BNPパリバ・アセットマネジメントは、上場投資信託(ETF)の投資戦略も含めて、生物多様性関連の課題を対象とした幅広い投資ソリューションを提供しています。

計画に参加を:生物多様性の喪失を防ぐために投資家が果たすべき役割(PDF: 1.05MB)

出所:BNPパリバ・アセットマネジメント

※本記事はBNPパリバ・アセットマネジメントグループの公式ブログ「VIEWPOINT」で英語で発行された記事の抄訳となります。原文をご覧になる場合はこちらをクリックしてください。

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